コラム
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作成日:2025/09/26
ハラスメント事案への企業対応:労災・損害賠償・退職処理をどう乗り越えるか



パワハラ・セクハラなどのハラスメントは、職場に深刻な影響を与えます。

被害者対応を誤れば労災や損害賠償請求に発展し、加害者対応を誤れば「処分が甘い」「逆に人権侵害だ」と二次トラブルに発展しかねません。

 

本記事では、実際のセクハラケースをもとに、被害者・加害者・企業リスクの3つの観点から、社労士・弁護士の視点で整理しました。

 

1. 企業に迫る損害賠償リスク

 

ハラスメント事案で会社が負う可能性のある責任は大きく分けて2つです。

 

使用者責任(民法715条)

加害者の不法行為について、会社が損害賠償責任を負う可能性。

 

安全配慮義務違反(労働契約法5条等)

職場環境を守らなかったとして慰謝料を請求される可能性。

 

訴訟では、記録(発言・経緯・面談メモ等)の有無が勝敗を分けます。

記録保全・対応経過の文書化・弁護士対応の準備が不可欠です。

 

2. 労災・退職処理・社会保険の実務対応

 

ハラスメントによるメンタル不調では、労災給付や傷病手当金の利用が焦点になります。

 

労災かどうかを判断するのは労基署(会社は拒否できない)

 

傷病手当金は退職後も継続受給が可能

 

退職処理では以下がポイントです。

 

出勤率8割未満でも、会社の裁量で有給休暇を付与できる

 

退職日を延長(例:9月→10月)することも可能

 

有給消化で退職するのが基本、社会保険料清算は分割や相殺を柔軟に

 

説明不足や曖昧な処理は「有給の買い取りだ」「不当な精算だ」と誤解され、トラブルの火種となります。

 

3. 被害者対応の実務ポイント

 

被害者に不信感を抱かせないためには、次の点が重要です。

 

記録を残す:発言・面談を必ず書面化

 

不確実なことは言わない:「労災で上乗せがある」といった曖昧な発言は厳禁

 

正しい制度説明:離職票発行、失業給付と傷病手当金は同時受給できない等

 

会社の説明ミスが「誤案内による損害」として賠償請求されるリスクもあります。

 

4. 加害者への対応:懲戒処分と再発防止

 

ハラスメント事案では、加害者への対応も極めて重要です。

 

事実確認と聴取

 

被害者と加害者は別々に聴取

 

感情的判断は避け、客観的証拠を集める

 

書面で残すことで後の紛争防止につながる

 

懲戒処分の検討

 

就業規則に基づき「けん責・減給・出勤停止・諭旨解雇」などを選択

 

処分の公平性を担保するため、過去事例や処分基準を参照

 

再発防止策

 

ハラスメント研修の実施

 

管理職への指導・評価体制の強化

 

再発時はより重い処分を検討

 

加害者の人権配慮

 

吊し上げや過度な情報公開は逆効果

 

あくまで「規則と法令に基づく公正な処分」で対応すること

 

被害者保護と同時に、加害者への正当な手続きと処分が、社内外からの信頼維持に不可欠です。

 

5. 企業が今すぐ備えるべき鉄則

 

本事案から抽出できる鉄則は以下の3つです。

 

記録を残すこと

 

説明を順序立てて書面化すること

 

弁護士対応を想定しておくこと

 

そして、加害者への懲戒処分と再発防止策も「並行して」進める必要があります。

 

まとめ

 

ハラスメント事案は「被害者への対応」だけでも、「加害者への処分」だけでも不十分です。

労災・損害賠償・退職処理・社会保険精算まで、法的リスクが複雑に絡むため、全体像を見据えた対応が求められます。

 

企業が守るべきは、

 

被害者の信頼を守る配慮

 

加害者への公正な処分

 

会社としての法的リスク管理

 

この3つのバランスです。

 

不用意な一言や曖昧な処理が訴訟に直結することもあります。

社内体制を整え、専門家と連携することで、トラブルを未然に防ぎましょう。

お問合せ
桐生社会保険労務士事務所
〒231-0027
神奈川県横浜市中区扇町
1-1-25横浜関内ビジネスセンター
TEL:045-610-7894
FAX:03-4400-2721
 
 
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