コラム
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作成日:2022/03/22
外回りの営業社員の労働時間管理について



社員の労働時間を管理しなければならないことはわかっていても、外回りの営業だったり、直行直帰だったりして、タイムレコーダーによる管理がなかなかできない場合があります。

厚生労働省の通達や裁判実務では、社員の労働時間の管理は会社の責任であるとされています。
労働時間の管理をいい加減にしていては、社員から突然、残業代を請求される恐れがあります。

現実の話として、
「労働時間を管理しろと言われてもうちは外回り営業の社員が多いから管理なんてできないよ。
社員のために直行直帰も許可しているし。
営業職としての手当てがついているから問題ないはずだ。」
とおっしゃる方が多い気がします。

ところが、営業手当をつけているだけでは、その外回り営業職の社員がたとえば「毎日夜遅くまで営業で歩き回っていた」と主張して残業代を請求してくるといった社員とのトラブルを完全に避けることはできません。

では、このように会社が社員の仕事の実態や労働時間を正確に把握することが困難な場合は、どうすればよいでしょうか?

答えの一つとして「事業場外みなし労働時間制」という制度があります。

事業場外みなし労働時間制は、次の2つの要件を満たす場合に、その社員は所定の時間分、仕事をしたとみなすことができるという制度です。

@社員が労働時間の全部、または一部について、事業場の外で業務に従事していたこと

Aその労働時間の算定が困難であること

この制度を活用すれば、会社は、労働時間の算定が難しい営業職の社員などに対して、残業代の支払を回避できることになります。

もっとも、外回りの営業職社員などであっても、事業場外みなし労働時間制を適用することができないケースもありますので注意が必要です。

裁判例上、「随時会社の指示を受けながら労働している場合」
などは、社員の労働時間の算定が困難であるとはいえないため、前述Aの要件を満たさず、事業場外みなし労働時間制を適用することができないとされているのです。

過去の裁判例としては、「阪急トラベル・サポート事件」があります。

この事件は、旅行会社が企画・催行する国内・国外ツアーのために派遣業者から派遣されたツアー添乗員の添乗業務の遂行について、ツアー添乗員から会社に対し、未払時間外割増賃金等が請求された事案でした。

裁判で、会社側は事業場外みなし労働時間制の適用を主張し、時間外割増賃金等の支払義務がないことを主張しました。

外回り営業職社員などと同じく、ツアー中の添乗員の行動の詳細を把握することは困難ですから、事業場外みなし労働時間制の適用があるようにも思えます。

ところが、裁判所は、事業場外みなし労働時間制の適用はない、と判断しました。

その理由は、以下のとおりです。

@添乗員が旅行会社から各ツアーの出発から帰着までの詳細な行程とその管理の仕方を指示されている
Aそのできるだけの順守を守らなければならない
B実際の行程についても添乗報告書に詳細に記載して提出しなければならない
C海外ツアーの場合は国際通話可能な携帯電話を持たされ、行程変更等の場合には会社へ
の連絡・相談を必要とされていた

以上より、労働時間の算定が困難とはいえないとして、事業場外みなし労働時間制の適用を否定しました。

外回り営業職の社員であれば、例えば訪問先や営業の方法などについて、会社から逐一指示を受けている場合は、随時会社から指示を受けながら労働していると言えるので、事業場外みなし労働時間制の適用できません。

これに対し、単に連絡できる環境にいるだけ、あるいは実際に必要なときに事務的な連絡が行われるだけなら、随時会社の指示を受けながら労働しているとはいえませんので、事業場外みなし労働時間制の適用は可能です。

最近は、社員が携帯電話を所持していることが当たり前になっていますので、事業場外みなし労働時間制を適用できるか否かは、慎重に検討する必要があります。

なお、事業場外みなし労働時間制を導入するには、労働基準法上、過半数労働組合または労働者の過半数の代表者と協定を締結し届け出なければならないとされています。

安易に制度設計をして、後で社員に訴えられると、残業代の精算などで多額の支払が生じることになりますので、制度設計前には、必ず専門家に相談されることをおすすめします。

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〒231-0027
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